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cachette -カシェート-

cachette -カシェート-(隠れ家) 管理人華月の日記など。
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黒猫少女


最近出会った猫。
あいつはきっと幸せの猫だと妄想して
こうなった。

日常に飽きた男と
不思議な少女?の物語。
時間があれば小説か台本にしたいな…
長い話になりそうだ(苦笑















ひどく、いらついてた。

会社から家に帰るため、車を走らせていた。
いつもと同じ風景。同じ日常。
仕事のストレスが溜まっていたのかもしれない。
ぼんやりとした意識で運転していたためか、アクセルに体重がかかり
スピードは徐々にあがっていった。

気付けば、スピードは法定速度をとっくに過ぎていた。
それでも、減速しようとは思わず、それどころか
アクセルに更に体重をかけていった。

いつもと同じ帰路のはずなのに、窓の外は全く違う世界のように思えた。
まじめな気性の私は、一般道でこんなにスピードをあげたことがない。
自分の車の隣を、外車が自分以上の速さで通り過ぎていく。
おそらく、優に100キロは出ているだろう。
いつもなら「あんな車、警察に捕まればいい」と思う車。
だが、今の自分には羨ましく思えた。

ここは高速道路ではない。100キロを超えれば、免停ものだ。
そんな恐怖が頭をよぎっても、減速しようとは思わなかった。
比例して大きくなるタイヤの音。
自分の車に抜かされていく他人の車。
いつの間にか、私は心からの興奮と喜びから笑っていた。

(なんて快感だ…!)

まるで、自分が銃の弾丸となったようだ。
曲がり角をぎりぎりのタイミングで曲がりながら
弾丸が最後には潰れて爆発する様子を想像する。
ガードレールにぶつかれば、道の無い暗闇に向かってハンドルを切れば
そこで自分の世界は終わる。
その危なさが、いっそう自分を興奮させた。
その時だった。

「………!!」

何か、黒い影が自分の車の前を横切った。
猫だ。
反射的に慌ててブレーキを踏み減速する。
幸い、猫は跳ね飛ばさずに済んだようで、ほっと息をつく。
そして、次に自分の視界に入ってきたのは
左足の不自由な少女だった。

杖をつきながらゆっくりと、彼女にとっては大急ぎで
横断歩道を渡っていく。
そんな彼女を見ながら、私の胸の鼓動は速さを増していた。
さっきの黒猫。
あの猫が自分の前を横切らなければ、今頃車は彼女を・・・。

(そうか…あの猫は、彼女を守ったのか…)

最悪の事態を想像することをやめ、なんの根拠も無い推測をたてた。
いや、自分にとっては確信だった。そうに違いない。
あの猫は、彼女を守るために自分の前に飛び出したのだ。
彼女は、黒猫に守られている。
不思議な少女。
ありふれた日常から遠ざかることを望んでいた自分にとって、彼女は非常に魅力的だった。

次の日も、その次の日も、
彼女はその道を歩いていた。
どうやら、彼女がいつも歩いていたことに、自分が気づいていなかっただけらしい。
いつもと同じ風景に、新しい色がついた。

『黒猫少女』

いつしか自分は彼女のことをそう呼ぶようになり
彼女に対し、様々な空想をするようになる。

そんな空想を彼女に一蹴される日がくるのは
もう少し、後のことになる。
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